再生可能エネルギー農家宣言! 農地から農作物と電気が収穫できる
2016年1月17日、念願のわくわくソーラーファームが稼働を開始しました。1メガワット(1000キロワット)以上のメガソーラーの多くが、広大な野立のソーラーパネルを畑の様にみなして、ソーラーファームとネーミングしているのを見かけます。それに対して、私たちのわくわくソーラーファームは、農地の上空3メールに屋根の様にパネルを配置して、その下の農地では実際に農作物も栽培するものです。その意味で名実ともにソーラーファームといえるでしょう。農地から農作物と電気を収穫できる、農家にとっては夢の様な仕組が今現実に可能となっています。一般的にはこの方式をソーラーシェアリングと呼び、行政上の正式呼称は営農型太陽光発電と言います。日本ではまだ事例が多くなく、東広島市では、私たちが稼働第一号ですし、広島県下でも2016年1月現在数例有るか無いかでしょう。稼働事例の多くが先行地域の関東地方に集中しています。ここでは、その導入経緯と許認可関係、設計と設置工事、稼働後の農作物と電気の収穫実績状況等について、レポートしていきます。
ソーラーシェアリング (営農型太陽光発電)の導入経緯
そもそもの始まりはやはり2011年3月の東日本大地震と福島原発事故でした。自然の脅威と人間の傲慢さを目の当たりにしてのやるせなさから、2012年3月の屋根での発電に続き、2013年6月耕作放棄中の畑に18キロワットの設備を導入しました。この段階でソーラーシェアリングという営農型の太陽光発電の存在を知りましたが、稼働実績がほとんど無いために価格も高く、前例なしゆえに許認可も不透明でした。農地に無許可で設置のパネルが強制撤去させられた事例も伝わり、先駆者たちのパイオニア精神を揺さぶっていました。
農地の転用については特に2013年あたりから規制強化がすすみ、10ヘクタール以上の広域活用が可能な一団の優良農地である農業振興地域については、耕作以外への使用は原則禁止となっていました。ただ一方で徐々に勇み足的な動きが広がっていたソーラーシェアリングについて、パネル下での営農維持の厳しい条件(後述)をつけて実施可能への門戸を少し開く通達が2013年3月に農林水産省から出ました。そんな中、2014年の秋かねてより引下げ見直しが進みつつあった、太陽光発電の全量買取制度(FIT)の2015年度以降の買取価格がそれまでの1キロワット時税抜32円から27円に一気に15%引き下げられる可能性が伝わりました。それは事実上、当面太陽光発電の導入は14年度中に経産省の認可を取得しないと当分の間、投資する意義が見い出しにくくなることを意味していました。
次世代農業EXPO2014と千葉の上総鶴舞ソーラー発電所見学へ
折しも、千葉幕張メッセで次世代農業EXPO2014が10月に開催されておりこれ幸いと参加しました。会場で最も脚光を浴びて人だかりの多かったのがソーラーシェアリングを手掛ける企業のブースコーナーでした。2013年の農水省通達で曲がりなりにも営農型太陽光発電が公認されたことで一気に関心が高まったのでしょう。設備価格も1年前よりかなり下がった気配で、1キロワット当り30万円台前半の可能性を示唆していました。それは20年間平均の実質投資利回りが4パーセント前後を可能とする価格で、投資意欲を誘うものでした。さらにブースの一つに展示実演されていた(株)ソーラーカルチャーの手動回転式パネルは大いに興味をそそりました。
これはいけるかもしれない。だけども遮光率3割のパネル直下の農地で農水省通達の厳しい条件を満たす農作物の栽培収穫は本当に可能なのかが、気になり始めました。条件に合わなければ撤去を要求していたからです。その疑問解消へのヒントは、ブースの一角の人だかりの中で上総鶴舞太陽光発電所の施主である高澤氏の言葉にありました。『現地の営農型太陽光発電と野菜の栽培状況を見学したい方は、どうぞいつでも来てください。農水省の通達を受けて日本で最初に稼働したソーラーシェアリングで、野菜も問題なく栽培収穫しています・・・・・』。
※上総鶴舞太陽光発電所の紹介動画はこちらから
翌日の昼前には、穏やかな秋晴れの日を浴びて大正時代に建てられたらしいレトロな木造のかずさ鶴舞駅のプラットホームで握り飯弁当を食べていました。上総鶴舞は千葉県市原市のJR内房線五井駅から外房のいずみ市までの39キロを結ぶレトロな単線小湊鉄道のほぼ中央にあります。この鉄道の駅舎はすべて大正昭和のレトロな雰囲気を漂わす木造無人駅で映画やTVCMにもよく使われるようです。天気の良い日には、のどかな田園や里山をはしる一両編成の列車に揺られて木造の駅舎をめぐる旅も楽しそうです。
目的の上総鶴舞ソーラ―発電所は、上総鶴舞駅から歩いて1キロ余りの小高い丘の上にありました。懸念した遮光率30%の影も薄暗いイメージはまるでなく、それでも夏場はいくぶん涼しいだろうと予想できました。畑の畝では、サツマイモやネギ、里芋などが元気に育っており、ミニトマトも夏場最盛期の収穫の名残りを残していました。発電所横の高澤氏宅を訪ねるとお父様が丁寧にいろいろとお話して下さいました。発電も順調だし、自分が大半世話している野菜も特に気になることもなく順調に育っており、週末には発電所近くの農産物直販所で販売していること、夏場には大型台風がきてパイプ構造のパネル設備が飛ばされないか心配して見に行ったりもしたが、まったく問題なかったことなど。そしてこの一年間は様々な業種の見学者がどっと来られましたよと言って玄関横の廊下の壁に貼られた膨大な数の名刺を指して笑われておられました。私の名刺もその中に加わったのでしょうか。
最後に、この辺りは広く平坦な農地で畦も少なく羨ましいですが、それでも結構耕作放棄地を見かけますね、との問いに、昔は農業が盛んでしたが、日本の高度成長期に東京湾沿いに京葉工業地帯が出来て、大企業がこのあたりの農家をみんな連れて行ってしまいましたよ。給料が良かったからね、と少し寂しそうでした。しかしソーラーパネルの説明はよどみなく楽しそうで、ソーラーシェアリングのパイオニアとしての一翼を自分も担っているという誇りが感じられました。心温まる良い旅でした。
私が2010年に開設したソーラーシェアリングの実証試験場(ソーラーシェアリング発祥の地)はソーラーシェアリング上総鶴舞から約3kmでした。機会がございましたら是非ご来場ください。
コメント有難うございます。上総の小湊鉄道は牧歌的で気持ちを癒してくれますね
ソーラーシェアリングを考案していただいたおかげで、中山間地の農業も新しい時代の
可能性を秘めつつあるようです。あとは為政者の決断だけなのでしょうが・・・
機会があればぜひ訪問させていただきたいです。
初めまして東京在住の村上と申します ソラカルシステムの松岡様に紹介いただきました。
長崎県の方でソーラーシェアリングを計画しています。
11月の1日か2日に見学にいきたのですが可能でしょうか
よろしくお願いします。
村上様。遠方からのご見学依頼有難うございます。11月2日(木)であれば
どの時間帯でもOKです。ゆっくりお話が出来るという意味では午後一くらいがベターでしょうか。
もし、ご希望であれば投資予定額や発電規模等がわかれば投資効果や予想実質利回り等の
かなり詳細なシミュレーションも可能です。ただしシミュレーションには相談基本料として
5千円ほどいただきますが。もちろん見学雑談だけなら無料です。
初めまして、私は県立広島大学、生命環境学部で学んでいる学部4年生の木原憲太郎と申します。
今、私は卒業論文のテーマとしてソーラーシェアリングについて調べています。
私は営農しつつ、太陽光発電も同時に行える最先端の農業に驚き、さらに広まっていく価値がある事業だと思い、その必要性についての研究しています。
その研究材料としてぜひ見学取材をさせていただきたいと考えているのですが、12月20日(水)か22日(金)以降のどこかで都合がよいお日にちはありますでしょうか。年越し後でも構いません。
よろしくお願いいたします。
木原 様
当方のWebsiteを訪問していただき有難うございます。
卒論にソーラーシェアリングですか、いいですね。わくわくするテーマですね。
可能な限り最大限の協力をさせていただきます。
22日の金曜日午後1時位ではいかがでしょうか。たっぷり時間が取れるスケジュールで
おいで下さい。お友達で興味がある方がご一緒なら見学とセミナー的に
お話することも可能です。
返信ありがとうございます。
22日金曜日の午後1時からぜひお願いいたします。
設備についてやお金の話、また今後ソーラーシェアリングを広めていくためへの考えなどもお聞かせいただけたら嬉しいです。
基礎の基礎からお聞きし、学ばせていただきたいと考えておりますのでよろしくお願いします!!
はじめまして。
安芸郡からです。
現在100坪程度の田んぼがあるのですが面積が狭く米を作るにも効率が悪いため
40年以上、放棄地となっています。
このままにしておくのも近隣に迷惑をかけるので何とかしたいと思い
数年に一度草刈りをしていますが目的もなく草を刈るだけでは虚しいばかりです。
営農型発電、遮光率80%でシイタケ原木栽培やキノコの栽培ができないかと考えています。
設備投資などを考えると100坪程度での売電では赤字でしょうか??
コメントありがとうございます。
まず少し長くなりますが最新の状況を言いますと、2020年の固定価格買取制度の大改正により、現在は低圧(50kw未満)の太陽光発電は原則として発電の30%以上をその場で自家消費しかつ災害時に電力使用開放可能などの要件が必要です。一般的にその場で30%自家消費は大規模施設などがない限り不可能ですので、結果として小規模太陽光発電の固定価格買取は困難となったということです。ただし、認定農家や荒廃農地、2種3種(市街地付近)などでの営農型太陽光発電であれば30%自家消費の条件は免除されます。ごく一般的な小規模農家の調整区域内農地や荒廃農地とみなされない単なる耕作放棄地での営農型太陽光発電は制度上困難となりました。
ただ仮に可能だったとしても100坪80%遮光率では15kw300万円程度の設備と思われ、直近買取価格は12円kwh程度ですので全量売電したとしても年20万円弱程度でしょう。利益がでるかどうかは状況しだいですが出てもわずかな額になります。一般的には2000㎡程度の農地で100kw程度(過積載で低圧扱い)での検討が妥当と思われます。
今後の展望としては、買取価格が電気の一般市場価格に接近してきましたので、あえて固定価格買取制度に乗っかる意味は消えつつあり、新電力会社に相応の相対価格で売電できる時代も遠くない状況です。営農型太陽光発電は必ずしも固定価格買取制度が条件ではありません。農業委員会の認可は必要でしょうが、地域が営農型太陽光発電を推進する動きになれば地域マイクログリッドなど新たな枠組みのなかで営農型太陽光発電が大活躍する展開も不可能ではありません。新たに洋上風力発電を大規模展開するよりも早期に容易に環境破壊なしに、政府の政策決定さえあれば可能な近未来といえるでしょう。