ソーラーシェアリングにすると農業が面白くなる理由(その1)

<中山間の平均的水稲農家から自然エネルギー農家へ>

S28年から30年まだ牛が荷車を引いた頃

S28年から30年まだ牛が荷車を引いた頃

日本の中山間にある平均的水稲農家はいつ頃から全く儲からなくなってしまったのだろうか。昭和30年頃(1955年)は、まだ納屋で牛を飼っており荷車や鋤を牛が引いていた。田植前の水田では田起こしから代搔きまで現代のトラクターに代わり牛が貴重な動力源として活躍していた。牛は生き物なので当然ながら毎日餌を与える必要がある。早朝から畦の草刈が欠かせなかった。そして田植から水田の除草、稲刈、ハゼ乾し、脱穀へと大半の作業が人力という本当に過酷な労働の連続だった。それでも、1丁2反(1.2ヘクタール)の農地での米栽培で何とか2人の子供の教育と生活の維持ができていたのは、今から思うとにわかに信じがたく頭が下がる思いだ。

その後昭和40年代から50年代(1960年から1970年代)にかけて、高度経済成長とともに農業の近代化が押し寄せ、耕運機、トラクター、田植機、コンバイン、乾燥機、籾摺り精米機、軽トラックなどの農業機械を各農家が保有するようになった。さらに除草剤など農薬・化学肥料の普及とも相まって農家をそれまでの過酷な労働から解放した。1ヘクタール余りの稲作は土日の作業でこなせる程度になり、大半の時間を別の収入源である給与労働等に充てることとなった。しかし、それは裏を返せば、万年赤字の農業経営構造の定着を意味し、赤字補てんのため年金や給与所得からの資金投入の恒常化をもたらすものであった。

ここで少し日本農業の現状を2016年統計数値でみてみよう。(詳細はこちら12)
農地耕作総面積は447万haでうち畑204万ha、田243万ha。それ以外に耕作放棄地が45万haあり増加中だ。田への販売目的水稲作付面積は147万haで残り約4割96万haが減反対象等と思われる。水稲作付農家総数は208万戸でうち販売目的作付農家は174万戸、残り34万戸は自給用の零細農家と思われる。1農家当りの水稲耕作可能面積=243÷208=1.17ha、実際の販売目的水稲作付面積=147÷174=0.84ha、北海道を除く規模別最多販売目的作付面積分布は0.5〜1.0ha。条件の厳しい中山間地域に限るともっと低い数値だろう。以下では、中山間の平均的水稲農家の耕作可能面積を1.0ha、 水稲作付面積を0.6haとして話を進めよう。実は私の農業規模がその平均値そのものだ。 上図左が万年赤字の現代農家の経営実態だ。玄米のJAへの出荷価格は30キロ当たり5千円前後、10a(1反)当りでは8万円余。1ha農家が減反後の60a水稲作付で年間僅か50万円の売上にしかならない。さらにその売上確保に肥料・農薬など売上連動の変動費が35万円、コンバイン・田植機・トラクター等大型機械への投資が600万円前後、15年毎買替としてその償却費が固定費として毎年55万円費用化される。育苗と籾乾燥籾摺りを外注しなければ、さらに乾燥機等へ300万円ほどの追加投資となり固定費も上積みされる。この費用設備構造で、年間赤字がゼロになる売上高は、
損益分岐点売上= 固定費÷(1-変動費/売上高)=55÷(1-0.7)=183万円。
さらに年間50万円の利益を出すためには、(55+50)÷(1-0.7)=350万円の出荷販売が必要となる。そのために必要な水稲作付面積は、350÷8.3/10a=4.2ha。50万円の利益のためには4ヘクタール(4丁)の水稲作付が必要。そのためには人件費や追加設備等の固定費がさらに増えていることだろう。要するに中山間地域では米農家としては全く成り立たない。しかし農家が身銭を切って赤字を補てんする限りにおいて、農家の犠牲のもとに国ベースでの稲作関連産業は成り立ってきたと言うことだろう。

バランスの壊れた財務構造を改善するには事業・家計に拘わらず、3つのポイントしかない。①売上収入を増やす。簡単ではないが、狭い面積で米より利益率が高く大型機械への依存が少ない野菜栽培は有力候補だ。②費用特に固定費の削減。年に1日か2日しか使用しない田植機やコンバインは多少不便でも数戸で共同所有できれば、設備投資が激減し固定費としての減価償却費も大幅に減る。③そして最も重要な発想転換は、金食い虫の資産の削減と同時に、お金を自ら稼ぐ資産を所有すること。結果として①の収入増につながり収入多様化をも実現する。その気になればそれが可能な時代が今動き始めている。

ソーラーシェアリングにすると俄然畑が面白くなった

ソーラーシェアリングにすると俄然畑が面白くなった

平均的農家が過酷な労働や万年赤字の餌食から歴史上はじめて脱出できるチャンスは、幸いにも様々な予定調和をもたらす形でやってきた。営農型太陽光発電すなわちソーラーシェアリングだ。農地の上空3メートルに設置の太陽光パネルで発電収入を得ながら、パネル下では野菜等の収穫もできる。それは単に太陽光の3割で発電をし、残り7割の地表到達太陽光で野菜等を栽培すると言うにとどまらず、日本が2017年現在直面している多くの難問を調和的に解決する可能性すら秘めている。わくわくする農業新時代の幕開けの予感が漂う。

<固定価格買取制度による売電収入は流動的だが・・・>
ソーラーシェアリング設置の最大の目的が売電収入であることは言うまでもない。2012年の固定価格買取制度の導入以来、これまでの新規参入者は相応の利益が20年間確定している。上図右側の自然エネルギー農家では、パネル回転式設備の税込設置単価を31万円/kw、20年間固定買取価格を24円/kwhとし実質平均利回り年3.5%を想定してみた。利回り(利益率)は設備設置費用と20年間固定価格買取制度の買取価格の動向次第だ。2012年に税抜40円で始まった買取価格は5年後の2017年4月現在21円まで一気に半分に引き下げられた。確かにその間、発電設備設置価格は量産効果等で約26%下落している。一方で買取価格の下落率は48%に達し、実質的な事業利回りは2%を割る程度まで下がり、事業リスクをとりにくい水準になった。制度開始直後の2年間余りの間に30円台後半の高い買取価格で5000万kw前後実質原発10基分もの仮需が発生。認定取得後稼働までの期間制限が無かったことを利用して多くのメガソーラーが設備価格の下落や権利転売を見込んで稼働を引き延ばした。制度改正により2016年度末で不明朗な認定分2800万kwが失効、残りも今後3年以内の稼働が義務つけられた。今後、30円台の高額買取保証の設備が3年以内に原発数基分稼働することになり、その分電気代への賦課金が急増することが予想される。それを危惧してか、新規認定の買取価格が一気に21円まで下げられ、来年には10円台の予想もある。世界の発電設備単価の2倍とも言われ下方硬直性も出始めている日本の設備供給環境のもとでは、買取価格のみをこれほど一方的に下げることは、太陽光発電事業への新規参入をほぼ困難にすることを意味する。

25円前後での買取なら何とか事業展望が描けた多くの地方に根ざした中小発電事業者も、21円ではその起業家精神が萎えようとしていることだろう。これらの中には、単なる利益の追求型ではなく、地方を元気にすること、あるいは日本の農業を元気にする手段として、太陽光発電が画期的で歴史的な役割を果たすことを認識し、そのためにあえて事業リスクをとろうとする多くの企業や市民団体、地方自治体なども含まれる。もちろん営農型太陽光発電であるソーラーシェアリングもその仲間だ。真摯な志しの中小事業者が今や比較的低い25円程度での買取価格でも新規参入が許されず、地域利益に貢献が少なく不明朗さが漂う大資本メガソーラーの高値買取が維持される現状は何ともやるせないばかりだ。固定価格買取制度は、設備の量産効果と様々なノウハウや環境整備の進展により発電コストが相応に下落すれば、いずれは市場価格競争に任せる形で廃止すべきものだろう。それには2017現在の設備価格がさらに4割程度下がることで発電コストが1kwh当り11円程度に到達し、買取価格が17円前後で市場売買と同程度となる環境ができた頃だろうか。
それまでは、日本の自然エネルギー産業は今しばらく年利4%程度を維持するふ化期間用のインキュベータ装置が不可欠と思われるのだが・・・

<世界の常識は化石燃料時代から再生可能エネルギー時代に激変中>
しかし、世界の動きに目をやると状況は一変する。新興国を含めた多くの国々で今、最も安く発電できる電源が太陽光発電や風力発電となりつつあり、その最安発電コストは1kwh当り4セント(5円)前後と石油・石炭火力の半値水準といわれる。自然エネルギーはクリーン、全員参加で平等民主的、分散的で中東依存せずエネルギー安全保障に合致などなど・・・は、既に自然エネルギーの付随的利点となりつつある。何よりも安く発電できるから、あの中国でさえ『新たな火の創造』とのスローガンのもと、加速度的に自然エネルギーへの投資を増やしつつある。2016年ですでに、『エネルギー・ベンデ(エネルギー大転換)』のドイツを抜いて世界最大の自然エネルギー発電大国となり、さらにばく進中だ。

そんな中で日本が何時までも二酸化炭素たれ流しの石油天然ガスや石炭に依存し、歴史の流れに掉さす逆行が続けらるものではないだろう。何よりも経済合理性に背く動きは、膨大な機会損失をもたらす可能性があり、すでにその兆候も見え隠れする。地球温暖化対応の2016年パリ協定を受けた2030年前後の世界各国の電源構成における自然エネルギー割合の目標は40%から50%前後であるのに対し、日本のそれはわずか22%と異常に低い水準で世界もあきれ顔だ。2030年には世界発電の60%が太陽光を中心とした自然エネルギーになる可能性があり、さらに前倒しで実現する確率が高いとの予測もある。常識的に考えて、日本も早晩自然エネルギーに大幅に政策転換せざるを得なくなるにちがいない。その時選択できる日本の自然エネルギー資源は、風力・バイオマス・地熱などよりも、やはり地理的普遍性があり日照面で有利な太陽光発電であろう。ただし、巨大資本のメガソーラーの適地はすでに少なく、山林等の広大な造成開発は様々な環境破壊を示し始めている。

既存の農地を現状のまま活用するソーラーシェアリングなら、環境破壊もなく資金は地元地方を潤わせ、何よりも農家のベースインカム形成に寄与し若者にもアピール、農業に創意工夫と活力を生み、エネルギーの民主的化と地産地消の感動をもたらす。企業にとっても世界に誇れる自然エネルギー関連技術革新のインセンティブとなり、時代の風に沿った自然エネルギー産業革命をエンジンとした経済発展を享受できる。ソーラーシェアリングが持つこれらの多面的で調和的なメリットを政策サイドが未来に向かって深く読みとり、積極的な周辺環境整備を展開し日本を本気で元気にする意志があるならば、ソーラーシェアリングという営農型太陽光発電が即効性のある有力な選択肢とならざるを得ないだろう。

ソーラーシェアリングにすると農業が面白くなる理由(その2)

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