ソーラーシェアリングにすると農業が面白くなる理由(その2)

<パネルの日陰は夏場炎天下での農作業を本当に楽にしてくれる>

パネルの日陰は炎天下の畑では本当にありがたい

パネルの日陰は炎天下の畑では本当にありがたい

今年2017年は5月から気温が30度以上の日が出始めた。最近は7月・8月の気温は35度以上が日常的で、地域によっては40度に迫る日もある。トランプ大統領が何と言おうと地球温暖化は着実に進行し北極と南極の氷も否応なく溶け続けている。真夏の農作業がメインとなる野菜農家にとっては熱中症に怯える毎日だ。草取り、土寄せ、芽かき、虫や病気の予防管理、収穫作業などなど、炎天下での畑仕事は多い。
ソーラーシェアリングはそこに現れた頼もしい助っ人といえる。パネルの陰は濃く、真夏でも50センチ幅の陰が1メートル間隔で続くのは本当にありがたい。風も通るので日蔭さえあれば断然楽だ。この有難さは陰のない炎天下で実際に作業してみないと分からないかもしれない。ソーラーシェアリングが普及すれば農家の熱中症は激減するにちがいない。高齢者が元気に農業を続けられる環境が確保できれば、うなぎ上りの高齢者医療費も多少なりとも抑制できるかもしれない。

<ハウスの様にトマトなどを糸で簡単に吊り下げられる>
トマトの露地栽培は難易度が高い。その理由の一つが茎や枝を支える棚の設置だ。竹で棚を組んでみたり、1本ごとに支柱を立ててみたり、杭を打って横にシュロ縄を張ってみたり、直近では写真の様に杭に竹竿を渡して『つりっ子』という糸で茎を吊る方法をとってきた。毎年杭を打ち込んで竹竿を縛って棚を作るが、2年もすると杭が腐って折れるし大量の杭や竿の運搬移動も大変だ。
ソーラーシェアリングはここでも様々な工夫やアイデアを生み出す。5mごとのグリッド状支柱と筋交の股にパイプを載せ、さらに畝に沿って上部にビニールハウス用の細いパイプをはわす。そのパイプにシュロ縄を渦巻状に巻き付けて、つりっ子用のフックをかける。パイプ等は常設なので以後は毎年つりっ子のフックをかけるのみであっという間にトマト吊り下げ作業が終わる。

横に渡す棚の高さはソーラーシェアリングの支柱等の設計段階で想定しておく必要があるだろう。ここでのパネルの高さは地上3メートル。筋交いの支柱との結節部分が地上約180センチの位置で、そこに掛けた棚用パイプも180センチ前後の高さとなる。ちょうどトマトの10段目が収まる高さで、人の頭にもあたらす、トラクター走行にも邪魔にならず、手を伸ばして作業ができる高さだ。

<畑全体をビニールハウスの様に1ミリ目の防鳥防虫ネットで囲める>
支柱グリッドは虫や鳥獣被害の防止にも効果的に活用できる。3月に冬場のブロッコリーがヒヨドリの群れに食い荒らされたので、鳥対策を考えるうちに虫や獣対策も兼ねて、パネル直下の約700平方メートルの畑全体を1ミリ目のネットで囲ってみた。40mの畝が10本も入る広さなのと、52本の支柱とパネル回転レバーを考慮しながらのネット張りだ。筋交に掛けたトマトのつりっ子用梁と棚のパイプでネットを支えつつ、パイプがない部分は1.2ミリの針金を張ってネットを留めている。洗濯バサミの様なつりっ子やバネが強めの洗濯バサミが留め具として有効に機能する。ネットの天井は当然ながらトマトの棚と同じ1.8メートルの位置で作業やトラクターの走行に不都合はない。ソーラーシェアリングの頑丈な支柱と筋交が5メートル間隔でグリッド状にあるからこそ簡単にできる工夫だ。

このネット張り効果は抜群だ。かっては写真の様に夏場のブロッコリーをネットのトンネル栽培したこともあるが、収穫のつどネットを開ける作業は非常に煩雑で、栽培そのものを1年で止めてしまった。また、ネットの中で立ち作業できることの意味は大きい。トウモロコシやいちごなど実の美味しものはほぼ100パーセントカラス等にもって行かれるので露地での栽培そのもを諦めていたが、今年はトウモロコシも100本余り植付てみた。ちなみに、トウモロコシやオクラは背丈が2メートルになるものも多いが、160センチ以下の品種もあり、180センチのネット高でも支障はない。多少の気がかりは、台風時の強風と冬場の10センチ以上の積雪の影響だ。さらにミツバチが入らないので人工授粉が必要な野菜もあるかもしれない。また、願わくばソーラーシェアリング関連の供給者側から、ネットやパイプその他取付部品など相応のサイズ等でオプション的に標準装備されたソーラシェアリングが販売されればより便利になるだろう。

<パネル遮光は乾燥を抑制、支柱に潅水ホースも簡単に設置できる>
30パーセントの遮光は、特に夏場の炎天下では畑や野菜そのものの過度な乾燥を多少なりとも抑える効果もありどうだ。それでも近年の異常気象下では野菜に散水したい場面は多々発生する。住宅や井戸近くの畑で給水ホースを伸ばせる距離なら、ソーラシェアリングの支柱や梁にホースを這わせることで、常設でもトラクター走行や草刈等の邪魔にならず、いつでも散水ができる体制がつくれる。
畑まで水道が延長できる効果は大きい。
また、クランプという取付金具を使えば支柱や梁へ自由自在に単管を固定でき、様々なアイデアを誘う。しかもクランプは一個150円程度と激安だ。ホースの分岐や繋ぎ部材なども最近は頑丈で使いやすい物が多く販売されている。

防虫ネットハウスで減農薬できると化学肥料もボカシに替えたくなる
ソーターシェアリングを活用して防虫ネットハウスができると大敵の青虫やカメムシが激減して、農薬の使用量も大幅に減る。そうするとやはり化学肥料も使用しないでオーガニック的野菜栽培をしてみたくなる。2017年春から化学肥料や堆肥をに替えて、ボカシのみの栽培を実験中だ。連作障害に無縁の農家が共通してボカシを使用しているらしいこと。野菜栽培のトラブルの多くが土壌の微生物のアンバランスを原因としており、化学肥料に替えてボカシを相当量投入することで健全な微生物栽培が可能となるらしいこと。畝作りの段階で石灰とボカシを鋤き込めば、以後追肥も省略し玄米アミノ酸酵素液の葉面散布を適宜行うのみで済みそうなこと。結果として窒素・リン酸・カリのむつかしいバランス判断から解放され費用も削減できること、などからボカシによる微生物農法に挑戦中。気のせいか、土がふかふかして団粒状のようにも感じられ、いまのところ野菜も元気に育っている。昨年までトマトの尻腐れが大量に出て悩まされたが、今年は今ところ数個にとどまって概ね健全だ。これもソーラーシェアリングの間接的効果といえるかもしれない。

枝豆に挑戦、化学肥料無しでも葉の緑が鮮やかで元気

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ボカシには好気性や嫌気性など様々なやり方がある。ここでは、米ヌカともみ殻を玄米アミノ酸酵素で発酵するやり方を採用している。参考までにレシピはつぎのとおり。
使用材料(10a用300㎏のボカシ):
ヌカ150㎏(30kg10袋)、もみ殻150㎏、温水240L(300㎏×80%)、 玄米アミノ酸酵素液2.4L、
玄米アミノ酸酵素粒体3㎏(300㎏×1%)
作り方:ヌカ・もみ殻・玄米アミノ酸酵素粒体を6回程度に分けて混ぜ、玄米アミノ酸酵素液100倍希釈温水(40L×200㏄×6回)をジョロで加えつつ混ぜる。翌日には差し込んだ温度計が60度位になり発酵が始まる。10日に一回あるいは温度が30度位に下がってきたら適宜温水を加えながら撹拌すると再度温度が上がる。水分は山盛りの下からにじむ程度あるいは軽く握って団子になりすぐ崩れる程度に。冬場でも一か月余りで、温度が上がらなくなり、ヌカの形や匂いがなくなり少し黒ずんだら完成。
任意だが、ここでは完成後のボカシに天然ミネラル鉱石粉5kgと玄米アミノ酸酵素ニームケーキ
20㎏(土中虫対策)を混ぜて畑に投入し、牡蠣ガラ系の有機石灰とともにトラクターですき込んでいる。

<農産物とクリーンエネルギーを同時に収穫する喜び>
ソーラーシェアリングは様々の点で納まりが良い。それは人類文明が狩猟時代の不安定で先が見えにくい生活スタイルから、農耕定住型に移行することで安定し様々な工夫と蓄積を生み出してきた歴史をも想起させる。資源枯渇と二酸化炭素等の排出による地球環境の破壊に怯える化石燃料文明から、無尽蔵で環境にもやさしく津々浦々にほぼ平等に存在し、個人から企業まで民主的に事業参入できる資源としての太陽光を活用する自然エネルギー文明への転換。それは自然循環の中で農地を耕作して農産物を収穫する持続的社会と似ていないだろうか。食とエネルギーという生存の絶対的基礎要件を、最少単位の個人レベルに取り戻し、安全と安心を自分自身で納得しながら着実に持続生産できるシンプルで透明な仕組だ。それは生産と消費の間に巣食う巨大複雑でブラックホール的現代社会経済構造システムに翻弄されることからの解放でもある。しかもすでに最安の電源に躍り出た自然エネルギーはまだまだこれから劇的技術革新の恩恵を受ける可能性が高い。ソーラーシェアリングによって既存の中央集権的大規模発電から地方分散の小規模発電に移行することは、送電コストや送電ロスも少ないエネルギーの地産地消を意味する。それは日本という国にとっても究極の分散型安全保障といえないだろうか・・・
こうした歴史的ともいえる予定調和的大変動の中で、一農家としても自己実現をしつつ同時に歴史的役回りを担えることの喜びをもっとみんなで味わおうではありませんか。

ソーラーシェアリングにすると農業が面白くなる理由(その1) 

 

 

ソーラーシェアリングにすると農業が面白くなる理由(その2)」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: ソーラーシェアリングによる野菜収穫と料理を楽しむ | わくわくマネーカフェ

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