電力小売自由化でこんな議論をしていて良いのでしょうか

2016年4月から始まる電力小売自由化に関する議論がかまびすしい。多くの新電力会社が電力とは直接関係のない自社の本業にからむセット商品を、多くの場合かなり複雑な仕組で顧客に提示し、そのセット料金の高低のみの議論にメディアが血眼になっているのが現状です。複雑で雑多な情報にカモフラージュされて本来の重要な核心部分から焦点がずれる図式。昔どこかで見かけた光景が脳裏をかすめます。こういうのをデジャブ(deja vu)と言うのでしょうか。

例えば、生命保険の超ロング大型売れ筋商品だった定期付終身保険更新型。ライフプランで必要保障額を試算するなどして複雑な保険の仕組みをじっくり吟味したら、多くの勘違いと無駄使いをしてきたことに気づいて愕然とした人がいかに多かったことでしょうか。また、仕組債付きの投資信託。債券や株式や外貨など元金割れリスクのある商品を、デリバティブといわれる先物やオプションを駆使、複雑に味付けして確定高利回り商品のごとくお化粧したものが広く投資初心者にも販売されることもありました。でも激しい市場変動で大損が確定する場面に遭遇して、はじめてそれが限定条件付きのノックイン商品で最終的な損失リスクは投資家に帰属し、販売側はリスクを負うことなく確定利回りを確保できる仕組だと知ったものでした。

いずれの場合も、複雑な仕組の商品であるがゆえに、普通の人は内容吟味を放棄し思考停止しがちで、結局販売側の説明を丸飲みの決断をしたことに失敗の原因があるようです。保険の基本的目的と必要保障額の考え方や、投資についても変動商品の特質とリスク管理方法など、あくまで自分の頭で理解する努力が肝要で、理解できなければ拘わらないのが本筋でしょう。プロだからあるいは大企業だから自分のために性善説的に考え良い提案をしてくれると期待して、販売者に判断まで丸投げして裏切られる。今の時代はのんびりした古き良き時代ではないようです。

では、貝のように閉じて何も考えず、何も決断もしなければ安全で幸せかというと、そういう時代でもなさそうです。外部から攻め込まれることも少なく平和な農耕文化に慣れ親しんだ私たち日本人は、動きの少ない社会、結果的に個人から国家まで未来を大きく変えるえるような状況判断と決断を先送りして、なんとなく目先の平和、言い換えれば無為無策を志向しがちな気がします。どうも将来への想像力と構想力とそれに基づく決断力の発揮が苦手なのではないでしょうか。でも今の現実は、熱湯に飛び込んで火傷しつつも飛び出す決断をして生き延びるか、徐々に熱せられるぬるま湯に浸って決断を先送りして静かに茹で上がってしまうかの岐路にあるのかもしれません。

夜明け前は暗い

夜明け前は暗い

そんな意味で、今回の電力小売り自由化狂想曲を考えると、高々毎月千円前後の料金差の複雑な商品に振り回されてばかりで、何かもっと大きな重要な論点を見失いつつあるような気がしませんか。私たち自身や将来世代の未来を大きく変えるかもしれないエネルギーのあり方を決める選択権を行使できる絶好の機会なのかもしれないということを・・・・
次ページに続く・・・

 

 

電力小売自由化でこんな議論をしていて良いのでしょうか」への1件のフィードバック

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