<ソーラーシェアリング初年度月別発電実績>
2016年1月に東広島市第一号の本格的営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)が稼働開始してから1年が経過。年後半の天候不順がやや想定外ではあったものの、回転式パネルの効果も出て予想を上回る発電実績となった。既存の野立てシステムと住宅屋根設置型も同時稼働中なのでそれらとの比較を交えながら、2016年1年間の実績報告をする。
単位Kwh | 営農型回転式38KW | 対ピーク比 | 野立固定型18KW | 38kw換算 | SS換算対比 | 住宅屋根型7KW | 38kw換算 |
2月 | 3,596 | 0.65 | 890 | 1,879 | 0.52 | 475 | 2,579 |
3月 | 3,676 | 0.66 | 1,221 | 2,578 | 0.70 | 734 | 3,985 |
4月 | 5,572 | 1.00 | 2,009 | 4,241 | 0.76 | 729 | 3,957 |
5月 | 4,850 | 0.87 | 1,814 | 3,830 | 0.79 | 837 | 4,544 |
6月 | 4,851 | 0.87 | 1,842 | 3,889 | 0.80 | 607 | 3,295 |
7月 | 3,858 | 0.69 | 1,502 | 3,171 | 0.82 | 781 | 4,240 |
8月 | 5,491 | 0.99 | 2,087 | 4,406 | 0.80 | 890 | 4,831 |
9月 | 4,272 | 0.77 | 1,627 | 3,435 | 0.80 | 470 | 2,551 |
10月 | 2,964 | 0.53 | 1,063 | 2,244 | 0.76 | 475 | 2,579 |
11月 | 3,580 | 0.64 | 1,065 | 2,248 | 0.63 | 432 | 2,345 |
12月 | 3,269 | 0.59 | 904 | 1,908 | 0.58 | 368 | 1,998 |
1月 | 3,133 | 0.56 | 800 | 1,689 | 0.54 | 330 | 1,791 |
年間合計 | 49,112 | 16,824 | 35,517 | 0.72 | 7,128 | 38.695 | |
日照換算 | 3.5時間 | 2.56時間 | 2.73時間 | ||||
FITrate | 34.56円/kwh | 42.00円/kwh | 42.00円/kwh | ||||
実質利回り | 5.53%/年 | 5.35%/年 | |||||
発電コスト | 18.6円/kwh | 23.8円/kwh |
これら3種類のソーラー設備について、たとえ同一規模に換算したとしても数値絶対額を単純に比較して良し悪しを判断するのは適切ではない。それぞれに発電条件が微妙に異なるからだ。例えば最も発電効率が低い野立18kwは、ソーラーシェアリングと方位はほぼ同一だが、パネル設備の南東端に直径40センチ近い大きな電柱がたっており、午前中を通してその影がパネル全体をなめて移動する。細長い影といえども直列連結のパネル全体の発電量にかなりのマイナス影響がでていると思われる。また早朝と夕方には、近隣建物の影も一部にかぶる。さらに設置角度が敷地面積の制限から10度と低くせざるを得なかったこともマイナス要因だろう。住宅屋根型7kwは高台で傾斜角度30度だが、方位が東向のため早朝から発電するも午後は急速に発電量が落ちる。
ここでは、方位が似ているソーラーシェアリングと野立の比較数値に注目したい。この野立の諸々の不利条件は38kw換算での発電量がピークの6月でもソーラシェアリング38kw換算対比で0.8水準と2割も低いことで折り込み済みと考えられる。通常なら年間通して一律に2割減であるはずが、特に太陽高度の低い冬期は5割減近くまで落ち込んでいる。言い換えればソーラーシェアリングは冬場の落ち込みが野立ほど大きくなかったため年間通しての発電量が49,000kwhと予想外に多くなっている。この理由こそが、冬場太陽の低高度に合わせたパネルの回転効果である。通期での日照時間換算でもソーラーシェアリングは3.5時間となっており、NEDO等の全国統計での3.0時間と比べ17%も多い。結果、買取価格が42円から34円台に下がっても単位当たりの売電収入と実質年利回り(20年間の総平均)は向上している。
FIT(固定価格買取制度)の買取価格がどんどん引下げられている。2017年4月以後10kw以上の産業用は3円下がって21円+消費税となる予定だ。2012年度の40円+消費税に比べればほぼ半分だが、政府は今後も有無を言わさず引下げ続けて2〜3年後には15円程度に近づける目論見のようだ。設備コストも多少逓減すると期待しても、実態無視のあまりにも急激で一方的な引下げに業界対応にも限界があるだろう。様々な事業リスクを考慮すれば、年間実質利回りが2%を割るような水準では投資対象としての検討は困難であろう。
回転式パネルは、いまや発電効率を少しでも高めて下落一方の買取価格に耐え、少しでも実質利回りを維持するための必須の要素と言えそうだ。
季節ごとあるいは1日の時間ごとの太陽高度に応じて、一体何度の角度にパネルを設定するのがベストなのかも気になるところだ。この点についても1年間の統計を記録したので、近々レポートする。