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わくわくソーラーシェアリング・ファーム見学会とセミナーをエコネット東広島主催で開催しました―今こそ地方から狼煙を!

2021年11月4日、秋晴れの気持ち良い日差しの午後、エコネットひがしひろしまに関わる東広島市役所の方々、広島大学の先生と学生さん達、さらに呉工業高等専門学校の先生と学生さん達がわくわくソーラーシェアリング・ファームを見学。折しもパネル下の一角にある水耕栽培スペースでは200本の原木椎茸が大きく膨らんだタイミング。さらに水耕栽培のミニトマトなどが1本の木から半径4m直径8mほどにまで広がり、まるでぶどう棚のブドウの様にぶら下がるトマトに、市役所の環境先進都市推進課の職員さんも衝撃を受けた様子。この水耕栽培はオフグリッドの太陽光発電480wと風力発電300wの電力で稼働し長雨時等の発電不足時には商業電力自動切換え装置がfail safeの役割を果たす。一方、本体の露地畑ではブロッコリ―、リーフレタス、人参が脱化学肥料のヌカともみ殻で作ったボカシのみで元気に育っている。

見学後は場所を移動して、セミナー会場へ。この2年コロナ禍でZoomによるセミナーが当たり前になっていたので、久々のリアルセミナーは何か新鮮だった。約60分間、ソーラーシェアリングの概要、小規模農業復活への役割、地域自立と脱炭素実現に向けた可能性について講演。最後に呉高専の小倉亜沙美講師がEVとPVと蓄電池活用の家庭電力収支についての話があった。

さて、先日グラスゴーで開催のCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)、日本の存在感のなさは寂しい限りで脱炭素に後ろ向きの国とのイメージが定着した感がある。しかし、約20年ほど前の2000年前後の数年間、太陽光発電生産量と導入量で日本は世界一を誇った時期がある。1970年代の中東紛争にからむオイルショックで油断への危機感を高めた経産省の堺屋太一氏等のVisioningから生まれた大掛かりで長期的な国家プロジェクトSunshine計画の成果だった。しかし、それから20年余り再生可能エネルギーの導入推移の各国比較では日本はぶっち切りの劣等生で将来に向けての積極的展望もまるでない。その上、これは単に再エネだけでなく、株価、賃金、企業評価、研究開発費、論文引用数、ジェンダー対応、起業意欲度、EV等どれをとってもこの20年激しく世界から取り残されるばかりだ。数年前にすでに1人当りGDPでも韓国に抜かれている。結果的に日本の世界競争力ランキングは25年前の4位から今年は31位に転げ落ち、23位の韓国にも大きく水をあけられている。

一体この20年余りの間に日本で何が起きているのだろうか。
1990年代の後半、会計事務所を主宰していた時期がある。当時税理士事務所の大半が記帳代行と税務申告という保守的過去会計に徹していた時代、米国公認会計士協会のVision Projectの存在を知る機会があった。パソコンと情報通信技術が激変する中、米国公認会計士協会は15年先を見据えてその業界と業際挙げて歴史という名の機関車にひかれないための自己変革を目指す一大プロジェクトを立ち上げていた。詳しくはこちらのセミナービデオを見ていただきたいが、次の様なVision Projectの文章に多くの刺激を受けて税理士事務所の業務を未来会計主体に大転換した経験がある。
◆We should all have to be concerned about the future because we will have to spend the rest of our lives there.
: 私達は皆、将来に関心を持つべきだ、なぜなら残りの人生をそこで過ごすしかないのだから。
◆Visioning is a rigorous, intellectual effort involving insight and analysis. At the same time, it is an exhilarating, creative effort that makes use of dreaming and imagination.
: Visioningは洞察力と分析力を必要とする知的で努力のいる作業です。しかし、それは同時に夢と構想力を活かす創造的で元気の出る作業です。

未来がどちらに向かっているか考えることなしに、未来への準備などできようもない。日本は未来への冷静な洞察と思いを放棄して、思考停止しているかのように思える。 またバブル崩壊後から今日まで「選択と集中」Select and concentrate の発想が広く深く浸透してきた。バブル不良債権処置の理由付けには重宝したアイデアだが、最近に至りその考えを徹底した日本の屋台骨的大企業が次々と破綻や困難に直面している。選択と集中には難しい判断やリスクもともなう。GEのJack Welchの言った原文は choose and focus だとか。有望そうなものを見つけて焦点を当てる程度の意味で、選択から外れたものを捨てるという意味はないし、ましてや単に本業に戻って思考停止し楽をする意味でもない。成長への多くの小さな芽を潰し、新たな挑戦への意欲と努力を削ぎ続けた20年ではなかったろうか。
自然界から人間世界まですべてのものは、Flow (流れ)がスムースになる方向と形に進化するという考え方(Design in Nature: Constructal Law)がある。葉脈や人の血流、道路交通網、情報の流れと組織形態などなど。今回のコロナ禍で明らかになった医療行政での目詰まりが典型で、この20年余りこの国では進化のためのFlowが抑制されたり分断されたり逆流したりとおよそ進化とは無縁な時代だったのではないだろうか。
そんな中でも、2011年経済産業省産業構造審議会・研究開発小委員会からかってのサンシャイン計画に匹敵する国家プロジェクトの提言がされたことがある。『「エネルギー・環境制約への挑戦」と「少子高齢化社会への挑戦」。これら2つの最重要課題について、我が国が世界の最先端を狙える「強み」のある技術で新たな解決策を見いだすべく、夢のある国家プロジェクトを立ち上げるべきである。』と。この提言の歴史的重要性に当時の為政者が気付いていれば、今頃日本は再エネの旗手となりわくわくする経済社会が展開していたかもしれない。

今、2050年脱炭素を目指してあらゆる可能性を総動員すべき時だ。しかし現実は太陽光発電についてもお得意の選択と集中が進行中だ。小規模太陽光発電は多くの個人や小企業がProsumer(生産者と消費者の両方)として再エネにかかわれることから様々なアイデアを駆使した挑戦が可能となる。それはEpocmaking なわくわくする時代の到来でもある。しかしその小規模な太陽光発電が2020年から大幅に抑制され、今や小規模な営農型太陽光発電でも参入は制度的に容易ではなくなった。太陽光による発電コストは数年前の1/3程度に激落、化石燃料由来の電気よりも安いレベルになり新規参入発電の再エネ賦課金はほとんど発生しなくなった。それでも小規模太陽光発電の新規設置は営農型太陽光発電でも一部特例を除き概ね参入できなくなった。一方で数年前の異常に高い買取価格で賦課金への影響も大きい未稼働大型案件にはいまだに温存されているものがある。

米国のマサチューセッツ州は、人口や面積とも中国地方程度の比較的小さな州で土地が狭い意味でも日本に似ている。そのマサチューセッツ州が3年ほど前に復活させた太陽光発電の固定価格買取制度は日本とは真逆の制度設計で実に合理的で実態に即してきめ細かく吟味検討されている。太陽光発電の導入総量目標を8段階に分割してそれぞれメガソーラーでの入札価格をベースに、小規模なものほど手厚く優遇する買取価格を設定。段階毎の目標達成の都度、買取価格優遇は逓減して早期目標実現と高額買取集中を抑えている。さらに営農型やコミュニティ型は6セント/kwh加算するなど、設備ごとの導入効果特性に応じても果敢に優遇している。
結果的に小規模発電所が増加すると思われるが、分散型ネットワークとして捉えることが可能で、集合体として考えれば巨大な規模になりうる。

先般、東京でオーガニックライフスタイルEXPOが開催され、そのプレイベントのSNSラジオのClubhouseでの対談に参加。日本の農地の10%に営農型太陽光発電を設置したらどうなるかの話をした。EXPO本体でのセッションでもこれが話題となり、追加で話した人口19万人の東広島市の農地10%に設置した場合の具体的試算数値も紹介された。
結論的には、東広島市民の消費電力がほぼ100%自然エネルギー電力となり、かつ毎年100億円近い資金の域外流出がとまり地元で循環することになる。無数の農家の所得が増大多様化することで若者の就農を促し、水稲から野菜等高収益農業への転換と里山の多面的機能の維持持続の希望も生まれる。ドイツや日本の環境省の試算でも、再生可能エネルギーの導入可能ポテンシャルは今や営農型太陽光発電が最大となっている。将来的には洋上風力やアンモニアや水素などのイノベーションも必要かもしれないが、目前の2030年までにどこまで脱炭素対応ができるかが将来の気候危機に大きく影響するといわれている。その意味で、すでに技術的に成熟しかつリードタイムも非常に短く災害時給電対応もできるソーラーシェアリングを全面的に活用する仕組み作りが求められる。
20年来、Visioningを忘れていた日本、今こそ心ある地域からVisioningを取り戻し小規模ソーラーシェアリングとEV(電気自動車)を巻き込んだ地域マイクログリッドの形成を推進して、農業と地域と日本復活の狼煙を上げよう。