ソーラーシェアリングについて農業現場から思うこと

2019年2月8日、千葉大学とNPO法人・地域持続研究所は、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電所)の2018年10月現在での実態調査を発表した。2013年4月にソーラーシェアリングの認可特例通達が出てから5年が経過し設置許可件数は1347件に到達した。しかし、その実態は二つの点で驚くべきものだった。一つはパネル下での栽培作物が極端に偏っている点。作付作物の上位5傑は、ミョウガ、サカキ(榊)、水稲、椎茸、ブルーベリーで、いわゆる一般野菜の種類別作付件数はそれそれ数件程度以下と極端に少ない。二つ目は許認可窓口である農業委員会の過半数を超える58.8%が「太陽光パネルの下では十分に営農できないと思う」と回答している点だ。いずれも、重大な事実誤認あるいはそういう判断に至らしめる特殊要因があるように思える。
そこで、これらの誤認識解消の一助になればと、2016年1月から3年間のソーラーシェアリング稼働実績をベースに、2018年度のパネル下での販売用野菜の栽培状況を報告するとともに、ソーラーシェアリングについて農業現場からの思いを述べてみることとした。なお、以下の栽培実績はパネル水平遮光率33%、パネル高3m、パネル直下栽培面積790㎡の営農型太陽光発電施設での事例である。

<2018年度もパネル下で多くの野菜を栽培収穫できた!>

レタス:写真は春先のレタス。今回の実態調査でレタスの全国作付件数は7件と報告されている。レタスの光飽和点は上図の様に2万5千ルクスであり光をあまり必要としないので日射の弱い冬場でも、また回転パネルで遮光率が80%以上になっても問題なく育つ。光飽和点はソーラーシェアリングに興味のある人にはお馴染みの理論だ。作物の光合成による成長が光の量に比例して進むのは一定限度までで、作物ごとにある点に達するとそれ以上はいくら光を多くしても成長効果はないとする学説だ。ということで、農業現場においてもそれを裏付けるごとくレタスは冬場の高遮光下でも順調に育っている。

イチゴ:イチゴは最近では四季成り品種も出回っているが、光飽和点は2万ルクス程度でレタスと並び最も日陰に強い野菜だ。今回調査でのパネル下植付件数は、わずか1件だ。余談だが、当方のパネル下の畑は、ソーラーシェアリングの柱を利用して700㎡余りの畑全体を1ミリ目のネットで完全に囲っている。鳥獣や害虫よけが目的だが、ことイチゴに関しては蜜蜂も入れない欠点があり、綺麗な実を収穫するには入念な人工受粉が不可欠であった。また50本以上植えた四季成りジャンボという品種が肝心の収穫時期にうどん粉病でほぼ全滅。わずかに残ったジャンボ以外の品種には波及していないので、品種の問題かホームセンターで買った苗そのものが汚染されていたのかもしれない。いずれにしても、露地栽培農業にはこんなハプニングは日常茶飯事だ。

枝豆:枝豆の今回調査での植付件数は4件だ。枝豆は植付直後に種豆や若苗がカラスなどに荒らされることが多い。ネットのおかげでその心配はなく比較的容易に栽培可能だった。光飽和点もレタスと同程度の2万5千ルクス程度と低い。収穫が7月の炎天下となるが次々に入れるパネルの影に救われる。

トマト・ミニトマト:トマトとミニトマトは野菜の中でも人気の高いメジャーな作物だろう。にも拘わらず、今回の実態調査ではトマトは5件、ミニトマトに至っては2件しか栽培されていない。トマト類の光飽和点は7万ルクスと他の農作物に比べ圧倒的に光を多く要する。7万ルクスを超えるものには8マルクスのスイカや里芋がある程度だ。ということは、トマトやミニトマトの栽培が遮光率33%のソーラーシェリング下で問題なく栽培できれば、ほぼどんな農作物でも栽培できるということだ。で実際に写真の様に問題なく栽培できており、オクラ、ブロッコリー、枝豆とともに当パネル下畑の主要販売作物を構成している。
ただ、トマト類の露地栽培は結構難易度が高いといわれている。何よりも、ナス科のトマト類は連作を嫌い一度栽培した畝には5年間はトマト類を植えないことが推奨されている。狭い圃場の場合は畝のやりくりに苦労する。この畑は3年前にソーラーシェアリングが稼働する以前に南北に一部トマト類を植えていた。パネル稼働後、営農必須要件の圧力も感じ敢えてトマト・ミニトマトも東西の畝で植付を強行した。結果、新旧畝の交差したあたりから見事に青枯れが拡がった。連作障害だった。連作障害は土壌中の微生物のバランスが壊れることで発生するといわれ、土壌改良が必要となる。その一環としてその年以後3年間、化成肥料の使用を一切止め、もみ殻と米ヌカをアミノ酸酵素で発酵させたボカシを作り、植付前の畑に有機石灰と天然ミネラル鉱物粉とともに散布して鋤き込んでいる。肥料はこれのみで追肥も一切なしでできた作物がここに掲載した写真である。ボカシ肥料に加え作付畝を移動して輪作したり、コンパニオンプランツのバジルを株間に植えたりする中で、徐々に収穫量も回復している。

オクラ:オクラの原産地はアフリカのエチオピアが有力なのでそれなりに日照を必要とし光飽和点は5万ルクスあたりと言われている。栽培難易度は比較的低い。炎天下の成長は早く毎日収穫しないとどんどん大きく硬くなってしまう。今のところ当農場での稼ぎ頭だ。にもかかわらず、今回の実態調査ではパネル下でオクラを栽培している人は、日本全国でただ一人、この農場だけとはどういうことだろうか?
下段の写真は、オクラとミニトマトの間にブロッコリー用の畝を作っているところ。米ヌカもみ殻ボカシと有機石灰を撒いた後、トラクターで鋤き込みマルチ管理機で黒マルチ掛けの畝を完成。畝一本用のスペースとして長さ40m幅1.6m程度。畝一本のこのケースではトラクタ―の方向転換は無理なので一度バックして耕しながら戻っている。

ブロッコリー・茎ブロッコリー:ブロッコリーは夏野菜でもあり冬野菜でもある。光飽和点は4万5千ルクス程度だが、冬場のパネル下でも十分育つ。上記の写真は8月に収穫が終わった枝豆の後の整地した畝に10月定植し2月3月に収穫したもの。アブラナ科は夏場はアオムシやヨトウムシ、コナガなどが大発生することもあるので虫の少ない冬季の方が作り易い。もちろん夏場でも1ミリ目のネット覆いが蝶のや蛾の飛来を防止するので相当程度の防虫効果はあるのだが、それでも農薬を抑制したい場合、夏場のアブラナ系は厄介だ。
今回の実態調査によると、パネル下でブロッコリーを生産しているのは当農場とほかに一カ所のわずか2件のみだ。

ルッコラ・イタリアンパセリ・ほうれん草・椎茸:主力ではないが、ルッコラやイタリアンパセリなどのハーブ類、ほうれん草、椎茸なども問題なく栽培収穫した。いずれも光飽和点は高くないが、今回の実態調査ではルッコラ、イタリアンパセリは当農場以外では栽培実例がない。ほうれん草はわずか3件のみ。椎茸はさすがに日陰を好むので栽培件数も上位四番手につけている。イタリアンパセリはパネル外で栽培中のものと比べ、パネル下での方が元気に越冬したのでパネルが霜抑制効果などプラスに働いた可能性もある。

<パネル下での作付品種が極端に偏る傾向についてー日陰への誤解>
 私の経験では遮光率を33%以下にすればほぼどんな農作物でも問題なく栽培収穫できる。にもかかわらず実態調査では、メジャーな野菜とは言えないミョウガが圧倒的に作付件数が多い。ミョウガは二番手の榊(サカキ)や四番手の椎茸ともども光飽和点は2万ルクス以下と低く、明らかにパネルの遮光下ではメジャーな農作物が育たないかもしれないという不安感が透けて見える。あるいは遮光率を極端に高めて敷地面積に対する発電量を優先した結果かもしれない。実態調査に遮光率の情報が公開されていないのが残念だ。作付け三番手の水稲は光飽和点の問題よりも、栽培技術が成熟しており外部環境に影響されることなく標準的な収穫量が安定的に確保できる点にあると予想される。このことは後述の営農型太陽光発電の認可条件に関する議論に関わってくることになる。

33%遮光をデフォルト原則と考えるなら、どんな農作物でも問題なく育つ。パネルの影で農作物が育たなかもしれないという不安は杞憂にすぎない。安心してメジャー作物の栽培に挑戦してほしい。今回の実態調査では農業委員会の58.8%が「太陽光パネルの下では十分に営農できないと思う」と回答しているのは完全な現状認識の間違いである。支柱が邪魔になって農業機械が使用困難と考えるているなら、それも間違いである。
また、最近の異常気象は真夏の日中気温35度以上を当たり前にしつつある。35度以上は人間はもちろん野菜にとっても過酷な環境だ。現実にトマトのタダレや過度乾燥による大量立枯れも経験した。もはや光飽和点の理論を出すまでもなく、野菜栽培が佳境となる夏場は3割程度の遮光をすることは野菜や人にとっても良いことを超えて不可欠になりつつあるとも言える。

<平均単収の8割維持条件が農家を苦しめリスクが挑戦を萎えさせる>
さらにソーラーシェアリング下での作付け作物の品種が全国的に半陰性といわれる日陰を好むものに大幅に偏っている理由には、もう一つの要因があるように思われる。周知のように農業振興対象農地での太陽光発電設備の設置は原則禁止で、営農型太陽光発電に限り厳しい条件のクリアを前提に特例として認可されている。その条件の中で農家にとり特に厳しいのはつぎの3点と思われる。
①パネル下での農作物の単収がその地域の同一作物の平均単収を2割以上下回らないこと。
➁3年ごとに農地の部分転用の更新申請をすること。(認定農家等一部は10年ごとに改正)
③毎年農作物の生育状況を写真付きで報告すること。
この中でも特にまじめな農家ほど苦しめられているのが①の平均単収8割基準である。そもそも平均単収の意味合いが不明確なことと、平均単収の2割以上下回らないという余りにも確定的な数値基準が不確定要素の多い野菜農業とくに露地栽培の現場に馴染みにくいことである。

先ず単収とは10アール当りで換算したキログラム収穫量すなわち反当収量のことである。その地域の同一作物の平均単収は県単位であれば農畜産産業機構(べジ探)や農水省のE-stat(政府統計総合窓口)などから主要作物についてはある程度情報収集が可能だ。しかし例えば広島県のミニトマトで検索するとある年の広島県は11600㎏なのに対し山口県は2930㎏などと極端に差があり年度間でも大きく変動している。その理由は次の様に推測される。野菜の反収は露地栽培と施設栽培で大きく異なりその構成割合にも大きく影響される。さらに露地栽培でも窒素肥料を大量投入型とボカシなど有機型で大きく収量が異なるし、畝の作り方や植え込み株数さらには成育管理など栽培技術の違いでも変わる。広島県のミニトマトはハイレベル農家が池のクジラ状態の可能性もある。さらに、最近の異常気象にからむ台風被害、昨年の夏の様に干ばつでの野菜枯れ、一作年冬の異常低温持続によるブロッコリーの成長不良、その他病気の蔓延や害虫の大量発生などなど野菜の収穫が年や地域、各農家により倍半分以上に変動するのはほぼ日常茶飯事である。そんな中で平均反収の8割維持を要求される農家はどんな気持ちだろうか。一時的要因による2割以上の落込みは営農指導しながら総合的判断するもので8割を割ったから即時パネルの撤去を強要するものではない、との通達の文言もある。しかし一方で営農型太陽光発電の悪質な事例として、パネル下での耕作放棄に加え、平均単収の2割以上下回る場合、とも明記されてもいる。夏野菜の収穫後の畑で引き続き頑張って同一年度内に冬野菜も栽培収穫した場合、平均単収との比較で2回収穫の実績値の評価はどうなるのだろうか。

この8割維持文言の本来趣旨は、太陽光発電での高収入を許容するとパネル下での耕作が放棄されるかもしれないことを恐れてのものと想定する。農家とくに露地栽培農家はつねに農業現場で農作物収穫がどれほど変動し不確かなものか身に染みつつ不安を抱えて営農している。そんな中での2割以上下回らないことという文言は、おそらく本来の趣旨を離れて一人歩きし始めていることだろう。農家はこの言葉に恐れをなして、収益力はないが収穫変動幅の小さい水稲や日陰に影響されにくくリスクの少ないと思われるミョウガやサカキといったおよそ主流とは言えない作物に殺到しているのだろう。反収の8割を維持できなくて下手すればパネルの撤去命令というリスクを感じれば、正々堂々とトマトやオクラ、ブロッコリーと言った主要作物や新しい野菜を栽培して米の数倍の収益に挑戦する勇気も萎えるかもしれない。トマトを栽培して平均単収を5割以上下回ったら悪質なケースとみなされるかもしれないが、それでも同じ農地に水稲栽培した場合の5倍以上の収入を実現しているはずだ。農業生産の合理性は高い収益側にあるのではないだろうか。

パネル下でしかるべき耕作が継続されているかどうかの確認は、上記条件③の毎年の農作物成育状況写真付き報告書で十分可能ではないだろうか。もし個別的にしかるべき耕作に疑問があれば既存の農地パトロールで抜き打ち的現地確認すれば簡単に状況は明らかになる。さらにどうしても数値基準が必要なら、パネル敷地の地目が田であれば本来そこで栽培したであろう「水稲の平均単収を2割以上下回らない販売収入」とすれば明確な基準となり、農家も安心して営農に専念できる。水稲の単収統計は明確で変動もすくなく安定しているのだから。

➁の「3年ごとに農地の部分転用の更新申請をすること」という要件もまじめな農家には相当負担の大きいものである。それは、①の平均単収8割維持基準と大きく関連している。8割基準の遵守に問題ありとされれば3年目の部分転用も認可されないという大きなリスクを負うことになるからである。更新されなければ巨大設備の撤去であり膨大な投資損失の発生である。このリスクは新規参入者には相当の不安材料となるし、銀行が営農型太陽光発電への融資をしたがらない理由もこの点にからむ。もし8割維持基準が緩和されれば、この3年毎の部分転用要件も緩和して一律に10年毎にすることで、農家のリスク軽減と金融機関融資を格段に容易にし、さらに行政の事務負担も大幅に軽減できることになる。いずれにしても、平均単収8割維持基準はパネル下での正常な農業を促すようには作用せず、逆に優良な意志のある農家の参入を阻害し、参入した農家にも本来の営農活動の王道からそれる作用をおよぼす要素があると思われる。2割という数字にとらわれるよりも常識的に耕作されており耕作放棄がなければ、ソーラーシェアリングの無限のメリットを生かすことこそが農業はもちろん地域の発展を含めた日本の元気を取り戻すことにつながると確信している。

 <本当にわざわざ農地の上で太陽光発電をしなくてもよいのか>
48.0%の農業委員会の「わざわざ農地の上で太陽光発電をしなくてもいいと思う」との回答も残念である。平均的農業経営体が十分に健全で黒字経営されており産業的に将来不安がないのなら、わざわざ余分なことを考えなくてもよいかもしれない。しかし、周知のごとく日本の平均的水稲農家にとって黒字経営は夢のまた夢で毎年数十万円の赤字を年金などで補填し続けることで泣く泣くかろうじて農地を維持しているのが現状だ。日本の水稲農家の平均像はおよそ持続可能なものではない。当然後継者世代も将来性の見えないところには近づかないからますます状況は悪化する。今はなんとしても将来に向かって持続可能となる仕掛けをわざわざ考えて実行しなければいけない時代ではないだろうか。これまで妙案が見つからないからこそ、農業の平均年齢が高齢化し中山間地域の疲弊が加速度化しているのだろう。中山間地域で周りを見渡せば、このままでは今後5年・10年単位で農地は10%単位で急速に自然荒廃することが目に見えている。

そんな中、幸いなことにこの数年でソーラーシェアリングという名の営農型太陽光発電が、地上での農作物栽培とその上空での太陽光発電という農地の同時ハイブリッド活用を可能とするようになった。私自身、親の残した1ヘクタールの水田での農業継続はほぼ諦めトラクターやコンバイン・田植え機など数百万円に及ぶ農業機械の新規更新もしないだろうと想定していた。わずか数十万円の米売上で赤字継続の水稲栽培を維持するのはどう考えても無理な話だ。しかし、3年前にソーラーシェアリングを導入して流れが変わった。パネルの売電収入に加えてその下部での高収益な野菜栽培への転換が農業経営に黒字の資金循環をもたらした。さらにパネルの支柱を活用してネットで畑を覆ったりトマトの釣り下げ棚を常設したり、発電設備の農業施設化にさまざまな工夫が生まれた。加えて野菜栽培の多様性と市場との対峙が、にわかに農業をわくわく面白く変えつつある。
発電設備の敷地約13アールで水稲栽培したとすると米の売上は10万円前後になる。一方、パネル直下790平方メールの畑では2018年度前述の様な野菜栽培をして近くのSC産直コーナーでの売上は75万円程度を想定している。米売上の7倍以上で、赤字の米に対して野菜は経費割合が3割程度だ。

一方で、ソーラーシェアリング設置は造成で環境を壊すこともなく、二酸化炭素排出ゼロのクリーンなエネルギーの生産者になることでもある。自然エネルギー農家の誕生だ。市民レベルの規模から参入できるエネルギーの生産者(producer)と消費者(consumer)の合体であるPROSUMERの誕生、それは今、世界に急速に広がりつつある新しいワクワクする歴史の入口をくぐることでもある。日本を除く世界は、太陽光発電や風力発電ですでに遥か先に姿が消えようとさえしている。日本が世界の仲間に戻るには、相当なダッシュが不可欠だろう。これから急速に荒廃しかかる全国農地の10%がソーラーシェアリングに活用されれば日本の総電力需要の34%が賄えて、農家から地域、国まで元気になる膨大なエネルギーを享受できる可能性が高い。どの分野にも邪悪な無法者はいる。そのほんの一部の取り締まりのために、より多くのまじめな人々の無限の未来をささげるのはいかにも悲しい。
農業と地方と国の未来をワクワクさせる鍵は農水省に回ってきたと思う。
農水省の活躍に幸あれ!
2019年3月11日
福島原発事故から8年目の日に。